国際学会の質疑応答で使える英語|聞き返し・答え方・困ったときの例文

技術データを確認しながら議論するイメージ

国際学会の質疑応答では、質問を一度で完全に聞き取れなくても、すぐに回答が浮かばなくても問題ありません。大切なのは、聞き返す→質問の意図を確認する→結論から短く答えるという流れを準備しておくことです。

この記事では、国際学会で発表する研究者・技術者に向けて、質問が聞き取れないとき、考える時間がほしいとき、手元にデータがないときに使える英語を場面別にまとめます。英文と日本語訳に加え、化学・材料系の研究発表を想定した会話例も紹介します。

私は素材・化学分野の研究開発に携わり、約2年間、海外の大学の研究室で研究しました。帰国後も米国・欧州の大学との共同研究や国際学会への参加を経験しています。そこで実感したのは、流暢な長文よりも、質問を確認して短く答える型を持っているほうが、落ち着いて議論を進めやすいということです。

国際学会の質疑応答でまず覚えたい英語10フレーズ

本番直前に確認するなら、まずは次の10個を押さえてください。

場面 英語フレーズ 日本語訳
もう一度聞く Could you repeat your question, please? 質問をもう一度お願いできますか?
ゆっくり話してもらう Could you say that a little more slowly, please? もう少しゆっくり言っていただけますか?
別の表現をお願いする Could you rephrase your question, please? 別の言い方で質問していただけますか?
一部分を聞き返す Could you repeat the last part of your question? 質問の最後の部分をもう一度お願いできますか?
意図を確認する If I understand correctly, you are asking about the mechanism. Is that right? 私の理解が正しければ、メカニズムについてのご質問ですね?
少し考える Let me think about that for a moment. 少し考えさせてください。
結論から答える Yes. Our results suggest that temperature is the main factor. はい。結果から、温度が主な要因だと考えています。
未検討と伝える We haven’t tested that condition yet. その条件はまだ試していません。
現時点の知見を伝える We don’t have a definitive answer yet, but our current hypothesis is that… まだ明確な結論はありませんが、現在の仮説は〜です。
後で議論する I’d be happy to discuss the details after the session. 詳細はセッション後にぜひ議論させてください。

質疑応答は「確認・結論・根拠」の順で答える

質問を受けたら、次の3段階で考えると回答を組み立てやすくなります。

  1. 確認:質問の論点を短く言い換える
  2. 結論:Yes、No、未検討、現時点では不明のいずれかを先に伝える
  3. 根拠:実験条件、観測結果、解釈を1〜2文で補足する

広い会場では、質問を言い換えてから答えると、会場全体に論点を共有でき、自分が正しく理解したかも確認できます。質問の復唱は回答を考える時間にもなります。大学のプレゼンテーション教材でも、質問を聞き直すこと、簡潔に答えること、分からない内容を無理に取り繕わないことが勧められています[1–3]。

質問が聞き取れないときの英語

質問全体を聞き取れなかった場合

  • Could you repeat your question, please?
    質問をもう一度お願いできますか?
  • Could you say that a little more slowly, please?
    もう少しゆっくり言っていただけますか?
  • Could you speak a little louder into the microphone, please?
    もう少し大きな声でマイクに向かって話していただけますか?
  • Could you rephrase your question, please?
    別の言い方で質問していただけますか?

単に “Pardon?” と言うより、速度・音量・言い換えのどれを求めているか伝えると、相手も対応しやすくなります。

質問の一部分だけ聞き取れなかった場合

  • Could you repeat the part about the experimental conditions?
    実験条件についての部分をもう一度お願いできますか?
  • Could you repeat the last part of your question?
    質問の最後の部分をもう一度お願いできますか?
  • What was the word you used after “temperature”?
    “temperature”の後に使った単語は何でしたか?

理解できた範囲を残して必要な部分だけ聞き返すと、会話をスムーズに続けられます。

質問の意図を確認するときの英語

英語が聞こえても、質問者が知りたい点が曖昧なことがあります。その場合は、二つの選択肢に分けて確認すると明確になります。

  • If I understand correctly, your question is about the long-term stability. Is that right?
    私の理解が正しければ、長期安定性についてのご質問ですね?
  • Are you asking about the mechanism or the experimental conditions?
    メカニズムについてですか、それとも実験条件についてですか?
  • Do you mean the initial activity or the activity after repeated use?
    初期活性のことですか、それとも繰り返し使用後の活性のことですか?
  • So, you are asking whether this method can be applied to other materials. Is that correct?
    つまり、この方法をほかの材料にも適用できるかというご質問ですね?

論点を確認してから答えることで、質問者が求める内容に合わせた回答へつなげやすくなります。

回答を考える時間を作る英語

質問が終わった直後に答え始める必要はありません。次の短い表現を使い、一呼吸置いてから回答します。

  • Thank you for your question. — ご質問ありがとうございます。
  • That’s an important point. — 重要な点ですね。
  • Let me think about that for a moment. — 少し考えさせてください。
  • There are two points I’d like to mention. — お伝えしたい点が二つあります。

“That’s a good question.” は便利ですが、どの質問にも繰り返すより、感謝、論点の確認、回答の構成を示す表現を使い分けると自然です。

答えられる範囲に応じた回答テンプレート

その場で回答できる場合

Yes. We observed the same trend in all three samples. One possible explanation is that the surface area increased after the treatment.
はい。3つの試料すべてで同じ傾向を確認しました。考えられる説明の一つは、処理後に表面積が増加したことです。

最初に結論を述べ、その後に観測結果と解釈を分けて伝えます。“We observed…” は観測した事実、“This suggests…” はデータからの解釈に使えます。

まだ検討していない場合

We haven’t tested that condition yet. It would be valuable to include it in a future study.
その条件はまだ試していません。今後の研究に含める価値があると考えています。

具体的な計画が決まっている場合は、We plan to investigate it in our next study. と伝えられます。予定が決まっていない場合は “It would be valuable to investigate…” が使いやすい表現です。

手元にデータがない場合

I don’t have that specific value with me today, but I can check it after the session.
今日はその具体的な数値を手元に持っていませんが、セッション後に確認できます。

確認後に連絡すると約束した場合は、相手の連絡先を確認して実際にフォローします。

研究範囲の外にある場合

That is outside the scope of this study, but it is an interesting direction. Based on our current results, we can say that…
それは今回の研究範囲外ですが、興味深い方向性です。現在の結果から言えることは〜です。

範囲外と伝えたうえで、関連して答えられる内容を一つ添えると、前向きに議論を続けられます。

未公開・機密情報に関わる場合

I can’t share the detailed formulation, but I can explain the overall approach.
詳細な配合は共有できませんが、全体的なアプローチは説明できます。

Let me check what information I can share, and I’ll get back to you.
共有できる情報を確認して、改めてご連絡します。

企業研究では、詳細データをその場で約束するより、公開可能な範囲を確認してから回答する方法が実用的です。

化学・材料系の質疑応答例

例1:実験条件を選んだ理由

Question: Why did you choose 80 degrees Celsius for the reaction?

Answer: We selected 80 degrees based on our preliminary experiments. Below that temperature, the conversion was too low, while higher temperatures reduced the selectivity.

日本語:予備実験に基づいて80℃を選びました。それより低い温度では転化率が低く、高い温度では選択性が低下したためです。

例2:再現性について聞かれた場合

Question: How reproducible are these results?

Answer: We repeated the experiment three times under the same conditions. The error bars show the standard deviation of those measurements.

日本語:同じ条件で実験を3回行いました。エラーバーはそれらの測定値の標準偏差を示しています。

例3:ほかの材料への適用可能性

Question: Can this method be applied to other polymers?

Answer: We have only tested it with this polymer so far. However, we believe the same approach may work for polymers with similar functional groups.

日本語:現時点では、このポリマーだけで試しています。ただし、同様の官能基を持つポリマーには同じアプローチを適用できる可能性があります。

例4:想定と異なる結果の理由

Question: Why did the activity decrease after the third cycle?

Answer: We don’t have a definitive answer yet. One possible explanation is catalyst deactivation, and we are currently analyzing the catalyst after the reaction.

日本語:まだ明確な結論はありません。考えられる説明の一つは触媒の失活で、現在、反応後の触媒を分析しています。

グラフ、増減、エラーバーを説明する英語は、英語でグラフを説明する表現集にまとめています。統計解析・AI・マテリアルズインフォマティクスの用語は、統計解析・AI・MIでよく使う英語用語集も参照してください。

議論が長くなりそうなときの英語

セッションの時間が限られている場合は、まず短く答えたうえで、続きの議論を別の時間へつなげます。

  • I’ll give you a short answer first, and I’d be happy to discuss the details after the session.
    まず短くお答えし、詳細はセッション後にぜひ議論させてください。
  • That requires a more detailed discussion. Could we continue during the coffee break?
    詳しい議論が必要な内容です。コーヒーブレイクに続きをお話しできますか?

セッション後の会話を続ける表現は、国際学会の懇親会・ネットワーキングで使える英語で詳しく紹介しています。

ポスター発表・オンライン学会で使える英語

ポスター発表

  • Would you like a brief overview of our work?
    研究の概要を簡単にご説明しましょうか?
  • Which part would you like to discuss in more detail?
    どの部分を詳しく議論したいですか?
  • Is everything clear so far?
    ここまでは分かりやすかったでしょうか?

オンライン学会

  • Sorry, the audio cut out for a moment.
    すみません、一瞬音声が途切れました。
  • Could you type your question in the chat?
    質問をチャットに入力していただけますか?
  • Let me share the relevant slide again.
    関連するスライドをもう一度共有します。

本番前に準備したいこと

  • 聞き返し・意図確認・未検討の3種類から、自分が言いやすい表現を一つずつ選ぶ
  • 想定質問を「研究目的・条件・比較・再現性・限界・今後」に分けて書き出す
  • 回答は最初の一文だけでも英語で準備し、声に出して練習する
  • 本編から外したデータを補足スライドとして最後に残す
  • 未公開情報について、説明できる範囲を事前に確認する

Stanford Universityのプレゼンテーション教材でも、関連する補足スライドを残してQ&Aで使えるようにする方法が紹介されています[3]。国際学会の準備、発表、ポスター、質疑応答をまとめて確認したい方は、国際学会で使える英語フレーズ|化学・材料系の発表・質疑応答・ポスターもご覧ください。

まとめ

国際学会の質疑応答では、すべてを一度で聞き取り、即座に完璧な英語で答える必要はありません。質問を聞き返し、論点を確認し、結論から短く答える流れを準備しておけば、落ち着いて議論を進めやすくなります。

まずは次の3つを、自分が言いやすい形で覚えておくのがおすすめです。

  • Could you rephrase your question, please?
  • If I understand correctly, you are asking about…
  • We haven’t tested that yet, but…

参考資料

  1. Northern Illinois University, Handling Questions and Answers
  2. UTokyo English Academia, How to Survive a Q&A Session?
  3. Stanford University Oral Communication Program, Handling Question and Answer Period
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