この記事で学べること
- 数字だけでなく、文章や写真もデータになる理由
- 「大きさを表す数」と「名前の代わりの数字」の違い
- 表の行と列が何を表しているかの読み方
- 感想や写真から、比べられる情報を取り出す方法
スマホで撮った写真、ゲームの戦績、好きな曲の名前、文化祭の感想。「データ」と聞いて数字の表を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、これらも分析の材料になります。
たとえば、文化祭への感想が100件あれば、どんな意見が多いか調べられます。花壇の写真が何枚かあれば、写っている花の数や色を比べられます。記録の形が違うと、調べ方も変わります。
この回では「データって、そもそも何?」から始め、数字・文字・写真の扱い方を見ていきます。難しい数式やPythonは使いません。身近な記録のどこに注目すると、知りたいことを調べられるかをつかみましょう。
データとは、あとから確かめられるように残した情報
データは、観察したこと、測ったこと、回答してもらったことなどを残した情報です。紙のノートでも、表計算ソフトでも、写真でも構いません。
「あの試合はよかった」という記憶だけでは、ほかの試合と詳しく比べにくいですよね。「シュート10本、成功4本」「前半の写真」「試合後の感想」と残せば、別の角度から振り返れます。
記録があると、記憶に頼らず比べる、後から別の疑問を調べる、考えた理由を人に伝えることがしやすくなります。記録を残す価値は、ただ情報を増やすことではなく、できることが増える点にあります。
ただし、データは出来事の全部を映したものではありません。得点表では声掛けや動きの工夫が分からないこともあります。「何を残したか」と同じくらい、「何は残っていないか」も大切です。
最初に分けよう:「どのくらい?」と「どの種類?」
データを調べるときは、まず項目の意味を見ると方法を選びやすくなります。米国統計学会などの教育指針GAISE IIでは、数量を表すものとカテゴリーを表すものを区別し、文章・写真・音声なども学習の対象としています。[1]
| 知りたいこと | 記録の例 | 最初にできる調べ方 |
|---|---|---|
| どのくらい? | 読書時間20分、得点3点、気温25℃ | 長い・短い、多い・少ないを比べる |
| どの種類? | 小説・漫画、晴れ・雨、勝ち・負け | 種類ごとに件数を数える |
| どんな内容? | 「展示は楽しいが、案内が分かりにくい」 | 意見の話題を分けて調べる |
| 何が写っている? | 花壇や空の写真 | 色・数・位置などを取り出す |
時間や得点のように、量や数を表すものを数値データ(量的データ)と呼びます。小説・漫画のように種類を表すものはカテゴリーデータ(質的データ)です。種類の名前を知ることより、「その項目でどんな比較ができるか」を考えてください。
文章や写真は、そのままでもデータです。そこから「感想の種類」や「花の数」を取り出すと、カテゴリーや数値として調べられます。表の分類は、完全に別々の箱ではありません。
背番号7と10を平均しても、選手の特徴は分からない
数字で書かれているものが、すべて数量とは限りません。背番号や商品番号は、名前の代わりに使う目印です。背番号10の選手が、7の選手より能力が3だけ高いわけではありません。
番号の平均を計算すること自体はできますが、普通は知りたいことに答えません。「番号で選手を区別する」「選手ごとの得点を比べる」と、数字の役割を分けましょう。
順位や満足度には「順番」がある
1位・2位・3位や、「不満・普通・満足」には順番があります。このようなものは、順序のあるカテゴリーデータです。
順位だけでは、1位と2位の差が0.1秒なのか10秒なのか分かりません。「満足」を3、「普通」を2、「不満」を1と書いても、人の感じ方の間隔が等しくなるわけではありません。番号を付けることと、量を測ることは違います。
最初は「満足の回答が何件あるか」を数えるだけでも役立ちます。平均を使う場合の考え方は、後の統計の回で扱います。
表を読むコツ:1行は何の記録?1列は何の項目?
次は、編集部が作った仮想の読書記録です。1行は「1回の読書」、列はそのときに残した項目を表します。
| 記録番号 | 日付 | 種類 | 時間(分) | 感想 |
|---|---|---|---|---|
| R01 | 10月1日 | 小説 | 20 | 続きが気になる |
| R02 | 10月2日 | 漫画 | 10 | 絵の表情が好き |
| R03 | 10月3日 | 小説 | 25 | 知らない言葉があった |
「小説の記録は何回?」なら種類の列を見て2回と数えます。「一番長く読んだ回は?」なら時間の列を見てR03の25分。「何に興味を持った?」なら感想を読みます。同じ表でも、問いによって見る列が変わります。
分析する項目は「変数」とも呼びます。ここでは「時間」「種類」などの列が変数です。複数の記録をまとめたものを「データセット」と呼びます。難しい言葉に見えても、今は「項目」「記録のまとまり」と読み替えて大丈夫です。
1行が「1人」なのか「1回」なのかは重要です。この表は3回の記録で、3人の記録とは限りません。小説を2回読んだことから「小説が好きな人は2人」とは言えないのです。
文章も調べられる:感想から「話題」を取り出してみよう
文化祭の改善に使うなら、感想をただ並べるだけでなく、「どんな話題への意見か」を分ける方法があります。以下はすべて仮想の回答です。
| 回答 | 元の文章 | 付ける分類 |
|---|---|---|
| A | 展示が楽しかった | 展示 |
| B | 案内が分かりにくかった | 案内 |
| C | 待ち時間が長かった | 待ち時間 |
| D | 展示はよかったが、待ち時間が長かった | 展示・待ち時間 |
最初に「展示の内容」「案内の分かりやすさ」「待ち時間」を分類として用意し、該当するものを付けます。Dには話題が2つあるので、両方を付けます。
数えると、展示2件、案内1件、待ち時間2件です。合計は5件になりますが、回答は4件。数えているのは話題への言及で、回答者の数ではありません。複数の分類を付けられると決めたので、合計が4を超えても間違いではありません。
これで「待ち時間に触れた回答が2件ある」と分かります。ただし、展示への言及は好意的で、待ち時間への言及は改善を求めています。話題の件数だけでは評価の方向までは残らないので、目的に応じて「よかった点」「改善点」という別の項目も付けられます。
単語を数える方法にも、向き不向きがある
「楽しい」が何回出てきたかを数えると、よく使われる言葉を探せます。でも「楽しくなかった」という文章を「楽しい」に近い語があるから好意的、と決めると意味を取り違えます。
少数の感想なら、自分で文章を読み、分類のルールを書いてから数える方法が使えます。大量の文章を自動で扱う方法もありますが、今は「文章から、問いに合う情報を取り出す」という仕組みをつかめば十分です。元の文章も残し、分類に迷うものは「保留」として見直せるようにしましょう。
写真もデータ:色の記録と、写っている物の意味
写真の色は、小さなマスの値として表せる
デジタル写真は、小さな点(ピクセル、画素)が集まった画像として扱えます。写真を拡大すると、こうしたマスを見つけられることがあります。教材Computer Science Field Guideでは、画素の色をRGB、つまり赤・緑・青の値で表す仕組みが説明されています。[2]
分かりやすく、白と黒だけの4×4の画像を考えます。ここでは白を0、黒を1とする学習用の約束を使います。一般的な画像ファイルの明るさの規則を示すものではありません。
| 0 | 1 | 1 | 0 |
| 0 | 1 | 1 | 0 |
| 0 | 1 | 1 | 0 |
| 0 | 1 | 1 | 0 |
黒は8マス、全体は16マスなので、黒の割合は8÷16=0.5、つまり50%です。図から「黒が多いか」を数で表せました。
よく使われるRGBの表現では、赤・緑・青をそれぞれ0〜255の値で表します。たとえばRGB(255,0,0)は赤、(0,0,0)は黒、(255,255,255)は白です。[2] すべての画像が同じ形式というわけではありませんが、「色も数字で残せる」と分かれば、入口の理解として十分です。
「色の数字が分かる」と「猫が写っていると分かる」は別
画素の値が分かっても、それだけで「猫」「花」「ボール」という意味が自動で分かるわけではありません。形や配置などを調べたり、機械学習で識別したりするには、別の仕組みが必要です。
一方、最初から高度な画像AIを作らなくても、写真を自分で見て「花は何個あるか」「空がどれくらい写っているか」を記録できます。写真を測定の材料にする方法です。
実際に、2021年の統計教育の論文では、生徒が撮った好きな屋外の場所の写真を使い、写っている空の割合などを調べる授業が紹介されています。[3] 写真をデータとして扱う学習は、プログラミングの前から始められるのです。
たとえば花壇の成長を調べるなら、写真に写った花の数を記録します。撮る方向が変わると隠れた花も変わるので、できるだけ同じ位置から撮ると比較しやすくなります。写真の青い部分が必ず空とは限らないように、色と物の意味をそのまま同一視しないことも大切です。
自分で試してみよう:1つの写真から、3種類のデータを作る
自分で撮った物の写真か、自分で描いた絵を1枚用意します。人物や住所が写っていない、机の上の文房具などがおすすめです。紙に次の3つを書いてみましょう。
- 数値:写っている物の数など、数えられるものを1つ。
- カテゴリー:物の種類など、名前で分けられるものを1つ。
- 文章:気づいたことや、確かめたいことを1文。
例として、鉛筆2本と消しゴム1個の写真なら、物の数は3、種類は「鉛筆・消しゴム」、文章は「長さの違う鉛筆がある」と書けます。長さを実際に測っていないなら、「12cm」といった数値を想像で埋めないでください。
次の仮想例も分類してみましょう。①読書時間15分、②本の種類「小説」、③図書館の本の管理番号1024、④感想「結末に驚いた」。どれが数量で、どれが種類・目印・文章でしょうか?
答えを見る
①は数量、②はカテゴリー、③は識別のための目印、④は文章です。③は数字で書かれていますが、本の面白さや長さを表す量ではありません。④から「結末」という話題を取り出せば、カテゴリーとして数えることもできます。
この練習で分かるのは、同じ写真や文章からでも、目的に合わせて異なる項目を作れるということ。次は「どれを調べると、自分の疑問に答えられるか」を考える段階へ進めます。
使える記録にするための、4つの小さな工夫
- 1行の意味を決める:1試合、1回の読書、1枚の写真など、何を1件とするかをそろえる。
- 単位と条件を残す:時間は分、長さはcmなど。日付や測り方も添える。
- 分類のルールを決める:感想に複数の話題を付けてよいか、迷うものをどうするかを書く。
- 元の情報を残す:集計した結果だけでなく、元の文章や記録も見直せるようにする。
「未記録」を0に置き換えないことも大切です。読書時間0分は読まなかった記録、空欄は分からない記録かもしれません。区別しておけば、あとで間違って計算に混ぜるのを防げます。
人の情報を使う場合は、学校のルールや本人の意向を確認してください。写真の背景から場所や人物が分かることもあります。最初の練習は、自分の持ち物や公開された教材など、扱いやすい題材で始めましょう。
この考え方は研究でも使います。測定条件や欠けた記録の扱いに興味が出たら、発展記事の材料データの品質を高める方法を読めます。写真や組成などから分析する項目を作る考え方は、材料開発の特徴量設計へもつながります。どちらも研究者向けなので、今は学んだ先の用途として知っておけば十分です。
よくある質問
紙のノートもデータですか?
はい。データはデジタルの記録に限りません。紙で意味を整理してから、必要に応じて表計算ソフトなどへ移せます。
文字は全部数字に変えないと分析できませんか?
最初からすべてを数字に変える必要はありません。文章を読み、話題を分けて数えることから始められます。コンピューターで計算する際には符号化などの表現が必要ですが、それは文章の意味が単純な数字の大小になるということではありません。
写真の画素数が多ければ、分析の答えも正確になりますか?
細かい部分を見やすくなる場合はありますが、必ず正確になるわけではありません。ぼけ、影、撮る方向、何を調べたいかにも左右されます。
1人で付けた感想の分類は、正解でしょうか?
分類の目的とルールによります。誰が見ても同じになるとは限らないので、判断に迷った例を残すと見直せます。他の人に確認を頼む場合は、内容を共有してよいかも確認します。
まとめ:データの「形」と「意味」を見ると、調べ方が分かる
データは、数字だけではありません。種類、文章、写真も分析の材料になります。数字で書かれた背番号は目印、感想から取り出した話題はカテゴリー、写真から数えた花は数量。見た目と意味を分けると、適切な調べ方を選びやすくなります。
今日のチェックは3つ。「何を1件として残した?」「この項目は何を意味する?」「どんな疑問に使える?」。好きな写真や趣味の記録を1つ選び、この3つを説明してみてください。
次回は「データ分析は何から始める?『知りたいこと』を決める練習」。集められる情報と、答えたい疑問をどうつなげるかを学びます。
参考文献
- Bargagliotti, A., Franklin, C., Arnold, P., Gould, R., Johnson, S., Perez, L., & Spangler, D. A. (2020). Pre-K–12 Guidelines for Assessment and Instruction in Statistics Education II (GAISE II): A Framework for Statistics and Data Science Education. American Statistical Association. 本文p.9(データ・変数の種類)。ISBN 978-1-7342235-1-4. 公式PDF。
- Computer Science Field Guide. Data Representation: Images and Colours. 第5.5節。公開年の明示を確認できず。教材本文。
- Arnold, P., Perez, L., & Johnson, S. (2021). Using Photographs as Data Sources to Tell Stories: GAISE II, Level B. Harvard Data Science Review, 3(4). 2021年11月12日公開。DOI: 10.1162/99608f92.f0a7df71。原著本文。
資料確認日:2026年10月10日。[1][2]のDOIは確認できませんでした。読書・文化祭・画素図・分類演習の記録と数値は編集部作成の仮想例です。公開された授業例[3]の結果と混同しないよう区別しています。

